「こらぁハル〜待て待て〜。」
のぶ姉がガキと遊んでる間、俺は昼寝する。
「うりゃ、小鉄〜。」
仔猫はころころと転げて、遊んでる。
こいつらときたら、元気いっぱいで毎日暴れるもんだから
すっかり俺はへとへとだ。
ハルは好奇心の塊で、ちっともじっとしてない。
大人しい小鉄も、やっぱり男の子だから、それなりに元気で、悪戯もする。
こいつらがいる時には、ゆっくり昼寝もできやしねえ。
「あら、歳。起きたの?」
「ん。ありがとな、のぶ姉。」
「お安い御用よ。可愛い孫の世話ですもの。」
他のやつが言うとむくれるくせに、自分では、すっかりばあちゃん気分だ。
ハルと小鉄が俺めがけて走ってくる。
足元にしがみついて、みゃあみゃあとうるさい。
けど・・・・すごく可愛い。
総司に似てるよなぁ。
俺には、あまり似てないのは何でだろ・・・・。
電子音が鳴って、のぶ姉が電話に出た。
「はい・・・あら。」
俺はガキどもに、それぞれ毛づくろいしてやる。
「ほら、じっとしてろって・・・・。」
ホントに、こいつらは大人しくできないな。
そんな事を考えてると、のぶ姉が電話を切って戻ってきた。
何だか、にやにやしてる・・・・。
「ふっふっふ・・・。」
「何だよ、気持ち悪りいな。どうかしたのか?」
「もう、あんたってば可愛くないんだから。あのね・・・」
のぶ姉が、そう言いかけて、玄関の呼び鈴が鳴った。
時計は8時を過ぎている。
こんな時間に、誰だ?
「あら。もう来ちゃった。」
のぶ姉が玄関に向かう。
玄関で人の声。
上がらせたみたいだ。
誰だろう。
居間のドアが開いた。
「よう、歳、久し振り!」
「近藤さん!」
って、ことは・・・その籠には・・・・。
「ほら、総司。ついたぞ。」
そっと籠を下ろすと、するりと出てきた。
見覚えある、三毛の毛並み。
ずっと、会いたかった・・・・。
「あ・・・総司・・・・。」
「歳さん!」
呼ばれて、思わず駆け寄ってしまいそうになったけれど。
餓鬼どもに先を越されてしまった。
「ふたりとも、いい子にしてた?」
ハルも小鉄も、おおはしゃぎだ。
二匹に抱っこをせがまれて、抱え上げる。
「うわ、重いなぁ。また大きくなったね。」
俺は、どうしたらいいかわらず、ただ、それを見ていた。
そんな俺に、近藤さんが話し掛けた。
「歳、ごめんな。突然だったもんだから、あいつも連れて行ったんだ。」
「あ・・・・いや、いいよ。何で謝るんだよ。」
近藤さんが俺を抱き上げた。
突然だったから、ちょっとびっくりしたけど
こうされるのも、久し振りだから、ちょっと嬉しい。
大きな手で撫でられて、何だかくすぐったい。
「何だか、おめえ、また綺麗になったなぁ。」
「・・・・世辞はいいよ。」
照れくさくて、そっぽを向く。
総司の傍に行きたいと思ってたけど、今は子供に占領されてしまってる。
自分は後でいいかと思い、近藤さんの腕に収まって、ふう、と息をついた。
あったかい手が気持ちよくて、喉を鳴らす。
ふと、総司がこっちを見ているのに気がついた。
子供達に捕まって動けないけど、こっちを見ている。
目が合った。
とたん、俺の心臓がどきどきとうるさくなる。
何だか、すごく恥かしい。
どうしたんだ、俺・・・・。
その日、総司は、うちに泊まることになった。
近藤さんは、明日も仕事だからと言って、早々に帰ってしまった。
のぶ姉や、子供達がいて良かった。
ちらちらと総司がこちらを見るけど、俺はそれに気付かないふりしていた。
何だか、まともに顔を合わせられない。
今までこんなこと、なかったのに・・・・・。
子供達が、ようやく寝静まってくれた。
総司が帰ってきて、余程嬉しかったんだろう。
はしゃぎ疲れていたのか、布団に連れて来ると
ふたりとも、すぐに眠ってしまった。
「歳さん。」
いつのまにか、総司は俺の傍に来ていて。
どきん、と。
また心臓が跳ねた。