嬉しくて眠れない。
明日は、やっと歳さん達に会えるんだ。
今日は最後の日だから、ちょっとご馳走が出た。
近藤さんも飲んでいたお酒を、俺に分けてくれた。
俺は近藤さんの晩酌に付き合ってたせいで、結構いける。
おじさんは喜んで秘蔵のお酒を出してくれた。
いい匂いの上等のお酒だった。
やっぱり、近藤さんの家族は優しい。
またおいで、と言われて、今度は家族で来ます、と答えた。
美味しい御飯でお腹いっぱいになって、幸せな気分だ。
いつもの部屋の隅で、窓の外の月を眺める。
歳さんとハル、小鉄・・・。
離れていたのは、ほんの数日だったけれど
少しは寂しいと思ってくれてるだろうか。
会いたかった・・・・・って言ってくれるかな。
大好きだ、歳さん。
傍にいれないのが、こんなに辛い。
そんなことを考えているうちに、眠ってしまったようだ。
ふと、意識が浮上して、体が温かいのに気付いた。
何だ?
あったかくて・・・・柔らかい。
ぼんやり目を開けると、そこはまだ暗くて。
誰かが自分に抱きついている・・・・。
それが、たまだと理解したとたん、俺は飛び起きた。
「うわ!な、何してるの!?」
たまは答えず、ただぎゅうぎゅう抱きついてくる。
離れてもらいたくて、傷つけないように引き剥がそうとするけれど
たまはびくともしない。
力づくで離そうにも、女の子に乱暴はできないし。
困り果てている俺に、たまの手が伸びてきて、唇を合わせられた。
慌てて突き飛ばしてしまいそうになるのを抑えて、引き離した。
「あたし、総司が好きだって言ったでしょ。」
「す、好きって・・・・」
実際、好意を寄せられた事は何度かあっても、ここまで迫られたことはない。
俺は、たまと「そういう仲」になるつもりはない。
どうしたら、わかってもらえるんだろう・・・。
「お、俺は・・・・。」
「何よ、意気地ないのね。一度くらいいいじゃない。」
ばれやしないわよ、とたまは俺を詰る。
俺にとっては、ばれる・ばれないの問題じゃない。
俺が、歳さんに顔向けできないことはしたくないんだ。
ただでさえ、歳さんの様子がおかしいのに・・・・。
歳さんが離れて行きそうで、怖いんだ。
混乱しているうちに、再び、たまに口付けられて。
ますますパニックになった。
―――――――歳さん。
「ごめん・・・俺は、駄目なんだ!!」
隙を見て軽く突き飛ばし、たまから逃げ出す。
全力で走って、近藤さんの布団に滑り込んだ。
いつもなら、誰かが来たら、すぐに目を覚ますのに
歳さんたちに会えると聞いて、随分気が緩んでしまってたみたいだ。
結局、俺は、たまが追ってきやしないかと警戒して
一晩中眠ることができなかった。