にゃあ、と仔猫の鳴き声。
胸が苦しい。
目を覚ますと、俺の顔を覗き込んでいるハルと小鉄。
ハルが俺の胸の上に乗っている。
道理で重いと思った・・・・・。
「おめえ・・・・俺の上に乗っかるなよ。重いだろ。」
文句を言っても、言うことを聞かない。
俺が目を覚ました事が嬉しいみたいだ。
ハルも小鉄も、またでかくなった。
だから、結構重い。
まだ、ちゃんと話もできねえガキだけど。
まだまだ親に甘える時期だ。
歯も小さな乳歯のまま。
だけど、最近は普通のメシを柔らかくして食べさせている。
少しずつ、色んな事を教えていかなきゃならない。
二匹いるけれど、それでも総司の方が手間かかったような気がするのは、どうしてだろうか。
・・・・なんて考えてると。
ハルと小鉄が俺の胸元でゴソゴソしてる。
小さな手のひらを、にぎにぎしてる。
やっぱり、こいつらはまだ赤ん坊に近いんだな。
「乳はもう出ねえって・・・」
出ないとわかっていても、吸いたいのか言うことを聞きやしねえ。
しょうがねえな、と胸をはだけて乳首を含ませる。
くすぐったいけれど、夢中になって吸い付く姿が可愛い。
子育ては苦手ではない。
何しろ、こいつらの父親も育ててやったようなもんだから。
総司がここに連れて来られた時は、何一つできなかった。
野良の仔猫だったから、しょうがないかもしれないけれど
表情がなくて、ぼんやりしていて、酷く弱ってた。
風呂も、食事も、全て俺がつきっきりで見てた。
だけど、自分の子供のようだとは思わなかった。
でかくなって行くにつれ、俺は総司が気になり始めた。
子供扱いして突き放そうとしたくせに、総司に冷たくされると悲しかった。
総司、帰ってこねえのかな・・・・。
この間まで、俺と一緒にいるのに違和感を感じていたのに
今は会いたいと思う。
勝手だな。
こんなんじゃ、いつか愛想尽かされてしまう・・・・。
ハルと小鉄がいる限り、ここに来ない事はないだろうけど。
自分はどうしたいんだろう・・・と。
数日前まで考えてた、くだらない事は消えてなくなった。
やっぱり、会いたくてたまらない。
俺は、あいつが好きだ。
「総司、明日帰れるからな。」
「本当ですか。」
近藤さんのお祖母さんの様子が、大分良くなったから
ようやく家に帰れることになった。
連休もなくなるし・・・・。
ほんの数日だったけど、俺には長かった。
ハルと小鉄に会える。
歳さんに、会える。
それだけで、ここ数日の憂鬱さはどこかへ行ってしまった。
「すまなかったな。」
そわそわし始めた俺に、近藤さんは苦笑する。
だって、しょうがないじゃないか。
ずっと会いたかった。
ほんの少しでも、離れたくなかった。
大事な、俺の家族。
早く明日にならないかな。
「もう、帰っちゃうの。」
その夜、機嫌が良さそうな俺に、たまが話し掛けてきた。
「うん・・・・。」
「良かったね。」
「ありがとう。」
そう言って、たまはぷいと、部屋を出て行ってしまった。
いつも元気なたまの様子が、どこか寂しそうで・・・・・。
今まで邪険にしてて、少しかわいそうだったかな、と思った。