久し振りの、自分の家。
ずっと気にはしていたけど、歳さんや子供達と離れたくなくて
ずるずる向こうの家に居続けた。
帰ってきた俺を、近藤さんはすごく喜んでくれた。
今更ながら、ちょっと罪悪感を感じた。
これからは、時々戻って来なきゃな・・・・・。
子供が、もう少し大きくなったら、ここに連れて来よう。
そうしたら、近藤さんも喜ぶだろう。
久々の自分の寝床は、不思議な感じだ。
さて。
戻ってきたはいいけれど。
何をしようか・・・・。
歳さんや子供達が気になるけれど、考えても仕方ない。
気持ちを切り替えて、一人で自由に歩き回った。
外の空気も久し振りだ。
随分、暖かくなった。
縄張りを一周したが、今日は知っている顔には会わなかった。
ちょっと拍子抜けだ。
することがなくなると、やっぱり子供を思い出す。
どうしているかな・・・・。
ハルも小鉄も、元気だろうか。
あんなに可愛い子供は知らない。
やっぱり自分の子だからかな。
歳さんには、親馬鹿と笑われるけど、本当に可愛いんだ。
産まれたばかりの二匹を見た時は、何とも言えない不思議な気持ちだった。
ふわふわで、小さくて・・・・でも、ちゃんと生きているんだ。
そっと抱かせてもらって、ようやく実感した。
とたん、胸がいっぱいになって、泣きたくなった。
歳さんに、何度もありがとうと言ったけれど、全然足りない。
一生かかっても返せないほどのものを、俺はもらったんだ。
日に日に成長していくふたり。
あの子たちには、寂しい思いなんかさせたくない。
俺は、物心付いた時から、ずっとひとりだったから。
できるなら、いつも傍にいてあげたい。
いや・・・・・俺が家族の傍にいたいんだ。
家族なんて、自分には、縁がないままだと思ってた。
だけど、歳さんに出会って。
歳さんは、俺の子を産んでくれた。
子供が産まれたのを知った時、本当に驚いた。
歳さんのお腹に子供がいるなんて、全然気付かなかったから。
本人も気付いてはいなかったけど。
今、思い返せば、あんなに様子がおかしかったのも
子供がいたせいだったんだ。
無事に産まれて、本当に良かった。
知っていたら、もっともっと大事にしてあげたのに。
歳さん・・・・。
そう言えば、子供が生まれてから、一度も触れてない・・・。
子供がいたって、歳さんは、綺麗なまま。
いや、かえって綺麗になった気がする。
子供を見る時の歳さんは、とても優しい顔をしてる。
照れ屋だから、口では冷めたことを言っているけれど
歳さんだって子供が可愛くてしょうがないんだ。
以前の、ちょっと近寄りがたい雰囲気も和らいで
なんて言うか・・・・・空気が優しくなった。
たまに、どきりとすることもある。
歳さんが、家から出ない猫でよかった。
あんなんじゃ、他の雄猫が寄って来そうで、怖い。
歳さんを信じてない訳じゃないけど
警戒心の塊のくせに、意外と鈍いから不安なんだ。
今度、あっちへ行ったら・・・・歳さんに触れたいな。
だけど、子供の前で歳さんに触れたら怒られそうだ・・・。
もやもやした気持ちを抱えながら、横になる。
風が気持ちいい。
今日は天気がいいから、窓を開けておいてくれてる。
近藤さんには悪いけど
早くあっちに帰って、子供達と歳さんを抱き締めたい。
向こうへ帰るまで、あと二日。
待ち遠しかった。