俺は寝起きで、何が何だかわからなかったんだ。
だから、あいつがじゃれてるんだと思って、抵抗が遅れちまった。
油断した。
あいつも立派に雄猫だったんだよなぁ。
あれよあれよと言う間に、やられちまった。
しかし、あの野郎・・・・寝ているところを襲いやがって・・・・・!!
俺は家から滅多に出ないから・・・・・・・・・総司が初めてだった。
きっと、総司もそうだろう。
勿論、ものすごく痛かった。
痛えって泣き叫んでも、完全に興奮してるあいつは止めてくれなくて。
暴れる俺を、押さえつけるあいつは、ちょっと怖かった。
あんなに力が強いなんて。
「ごめんね・・・止まらない・・・・。」
しきりに謝ってたけど、俺はふざけんなって思ってた。
てめえなんか、大嫌いだって泣いてたら。
「好きだよ、歳さん、大好き・・・・。」
泣きそうな顔して、何度も、そう繰り返した。
その顔は、まだ小さかった餓鬼の頃のあいつを思い出させて・・・・。
何だよ、その顔は。反則じゃねえか。
泣きてえのはこっちなのに。
くそ、どこまで甘えんだ、俺は。
仕方ねえから、俺は、終わるまで、じっと我慢してた。
触れたところから感じる、こいつの体が酷く熱かった。
開かされた足の付け根も、力ずくで押さえつける腕も、あちこち痛んだけど。
身体の奥が熱かった。
こんなに痛いのに。
こんなに苦しいのに。
俺の身体は、そうされるのを望んでいたかのようだった。
いきなりは頭に来たけど、お互い好き合っているのだから
いつかは、こいつとこうなったんだろうから
仕方ねえことかも。
それに、俺は「そういう時期」だったから
こいつは、それに触発されたのかもしれねえ。
だったら、こいつばかりが悪いって言うのは、あんまりだな。
そう自分を納得させた。
終わったあと。
ようやく開放された俺は、起き上がる気力もなく、ぐったりしていた。
散々泣き喚いたせいで、喉も痛い。
そんな俺を、総司は抱き締めて、しきりに謝った。
「ごめん。歳さん、俺・・・・こんなつもりじゃなかったのに・・・・・。」
酷いことをした、と。
自分のした事に、怯えて。
俺に嫌われたとでも思ったんだろうか。
しがみついて、ずっと「ごめん」と繰り返していた。
ああもう。
「・・・・とに・・・・・。しょうがねえだろ、本能なんだから。」
結局、俺は昔からこいつに弱ぇんだ。
痛くて、苦しかったけど、嫌じゃなかったんだ。
宥めるように、広い背中を撫でた。
「でも、俺は・・・・歳さんの嫌がることをした・・・・。」
「いいんだよ・・・・って、良くねえ。痛かったんだよ。」
「大丈夫・・・・・・?」
そう言って、俺の足の間を見ようとするのを、頭をぽかりと叩いて止めた。
「み、診なくていいから!・・・・・今度は、もうちょっと優しくしてくれ。」
「・・・・・・いいの?」
「ああ。痛くしねえならな・・・・・・だけど、もうおめえは俺の旦那だ。
他の雌猫んとこへ行ったら、承知しねえからな。」
恥かしくて、早口で言った。
ああ、顔から火が出そうだ。
総司は、一瞬、ぽけっとして・・・・・それから嬉しそうに笑った。
「ええ。俺は、あなたから、けして離れない。
歳さん・・・・・大事にします。」
「そうしてくれ。」
俺は、火照る顔を見られたくなくて、総司の肩に顔を伏せた。
総司は俺を優しく、でも、しっかりと抱き締めてきた。
とうとう、俺はこいつのものになっちまったんだなぁ・・・・。
ああ、のぶ姉や近藤さんに、何て言おう・・・・・・。
俺が、のぶ姉に、総司とつがいになったことを言うと。
「あらぁ、何よ、そんなこと知ってたわよ。」
「え?」
「総ちゃん、あんたに惚れてたもの〜。あんた気付いてなかったけど。
あんたからそう言うってことは、あんたも総ちゃん好きだったの?」
どうやら、総司が俺に惚れてるってことを、のぶ姉や近藤さんには知っていたらしい。
何だよ、知らねえのは、俺だけかよ!!
「あんた意外と鈍いのね〜。傍から見てバレバレよ。
それに、総ちゃんがね、あんたをお嫁に欲しいって言ってきたのよ。」
何てこと言いやがる、あいつ!!
恥かしいこと言いやがって!
「・・・・のぶ姉は何て言ったんだよ。」
「年増だけど、どうぞって。」
「悪かったな!!」
真っ赤になって憤慨する俺に、のぶ姉は爆笑している。
くそ、完全におもしろがってんな!!
「まぁまぁ、総ちゃんは、あんたを一生大事にしますって言ってたわよ。
いいわねぇ〜素敵な旦那様で。」
くすくす笑いながらも、のぶ姉は嬉しそうで。
俺は、居たたまれなくなって、ぷいと横を向いた。
ふん、当たり前だ。
せいぜい、大事にしてもらうさ。
「おお、歳〜おめえもとうとう人妻かぁ。」
「人妻っつーな!!」
つか、俺は猫だぞ。
「あいつにゃ、歳は勿体ねえけどなぁ。
総司のやつ、よくおめえを落とせたな〜。」
美人の落とし方を伝授してもらわなきゃな〜なんて。
近藤さんは、のん気にそう言って。
「ま、仕方ねえな。おめえもいい年頃だからなぁ・・・・・。
欲目じゃねえが、あいつは中々悪くないと思うぞ?総司で我慢しとけ。」
と。
近藤さんまで・・・・・・。
どいつもこいつも、俺を年増扱いしやがってえええええ!!!
つか、俺が年増なんじゃなく、あいつが若えんだよ!!
「俺は気にしませんよ。」
あーそうかいそうかい。ありがてえこった。
すっかり拗ねた俺は、総司が来ても、そっぽを向いていた。
今は、てめえの顔見たくねえんだ。
「歳さんは、昔から変わってませんよ。
でも、今のほうが、ずっと綺麗だ。」
ふん、おめえも口が上手くなったな。
そう思っても、自分の顔が熱くなったのがわかった。
恥かしくて、ふいと立ち上がり、部屋を出る。
すると。
総司が後ろからついてくる。
俺がきっと睨んでも、総司は笑っていて。
「何だよ。」
「どこいくの?」
「別にどこだっていいだろ。ついてくんな。」
「トイレ?」
「違う!いいからついてくんな!」
「俺は歳さんに会いに来たんだよ。傍にいたい。」
「な・・・・恥かしいやつだな!こっち来るな!」
面と向かって言われて、顔が赤くなる。
今日はのぶ姉もいるのに、妙な事を聞かれでもしたら・・・・・・。
―――――――――――――ぜってえ、からかわれる!!
だっと走り出したら、総司も走って追いかけて来た。
来るな馬鹿!!
狭い部屋の中、逃げる場所はそうなくて。
すぐに行き止まりになってしまった。
荒い息できっと睨みつける俺を、総司はふわりと抱き締めた。
馬鹿馬鹿、こんなとこ見られたら・・・・・!!
必死でもがくけれど、総司は離してくれなくて。
「嫌だってんだろ!」
「嫌・・・・・?」
ふと、顔を上げると、そこには哀しそうな目をした総司がいて。
何だよ何だよ、その面は!俺が悪いことしてるみてえじゃねえかよ!!
って、八つ当たりしてんのは、俺だしな・・・・・こいつには関係ないのに。
流石に、ちょっと可哀想になって、別にお前のせいじゃないと弁解した。
「や・・・・じゃねえよ・・・・・ただ、のぶ姉たちがいる時は
こんなことしねえでくれ・・・・・。」
「どうして?皆知ってるよ?」
「恥かしいんだよ・・・・。」
「じゃあ、今日は大丈夫だね。」
「おめえ、俺の話聞いてたか?のぶ姉が・・・・」
「のぶさんなら、いないよ。」
「え?」
「新婚さんの邪魔になるから、出かけてきます、って。」
のぶ姉のやつ〜〜〜〜〜!!
大きな世話だ!!!
「歳さん、好きだよ。今度は優しくするから、いい?」
「ちょ・・・・ちょっと、待・・・・」
そう言って、唇を寄せてくる総司を、両手で制止して。
確かに、次もOKしたのは俺だが、あれはまだちょっと怖い。
めちゃくちゃ痛くて、体が二つに裂けるかと思った。
ちょっと血も、出てたし・・・・・。
怯えが顔に出ていたのか、そんな俺に総司は。
「歳さんが嫌だって言ったら、すぐ止める。
歳さんにも気持ちよくなってもらわないと、俺も嫌だよ。」
「き・・・・きもちよくって・・・・・。」
気持ちよくならなくていい!とか思いながらも、痛いのは嫌だし・・・・なんて。
混乱気味な俺の隙をついて、総司が口付けてきた。
啄ばむように触れるだけの口付けを繰り返したあと、今度は深く合わせられた。
総司の舌がぬるりと侵入して、俺の舌を捕らえる。