くそ、このがきゃあ!

歳三はたまらず木刀を放り出した。
さきほどから打たれっぱなしだ。

「あれ?歳さん、もう降参ですか?
そんなんじゃ、いつまで経っても私には追いつけませんね。」

ンだとおおお?!

「誰がおめえに追いつくんだよ!追いつくのはてめえだろうが!」

「フッ。」

宗次朗がいかにも馬鹿にしたように鼻でわらう。

「私は、年ではあなたより下ですけどねぇ。
ええ。九つも。
でも、私は師範代。
あなたは門弟。
名実ともに、あなたが私に追いつくべき存在です。
しかも。現にあなたは私に、ちーーーーーっとも勝てない。」

歳三が睨み続けていることなんてまるで意に介さず
いかにも楽しそうに宗次朗が言う。

くそ可愛くねえ餓鬼だなああああ!
てめえってヤツはよ。

歳三は内心毒づいた。

「さあ。どうするんです?まだやりますか?」

くそ!

「フン!てめえみたいな剣術馬鹿にはよ、付き合ってられねぇぜ。
―――ああ、俺ァ、女でも抱いてくるかなァ!」

負け惜しみにそう言って。

宗次朗の顔が不満げに歪むのを見てようやっと、歳三は少し満足した。

「じゃあな!」

手を振って道場を出て。

だが、しばらくすると宗次朗の顔が浮かんで離れない。
なんだか少し、淋しそうな顔をしていたような気もする。

ちくしょう。

俺は、兄貴分だからな。自分に言い訳をするようにそう言って、歳三は踝を返した。

道場では、ひとり、宗次朗がまだ素振りをしていた。

「………おい。」

入り口の戸に寄りかかって、声をかけた。

宗次朗の顔がぱっと明るくなる。

(…可愛いじゃねえか。)

「相手、してやらァ。」




数刻後。

木刀をはじかれた歳三は、素手で宗次朗と組み合った。

年の差の分、あるいは素手ならば。との歳三の内心の思惑は、呆気なく床に組み敷かれて崩れ去った。

荒い息をつきながら、床に伸びた歳三の手首を押え、

「細いですねぇ。
よくこんなんで女の人抱いてくる、なんて言えますね。」

息も乱さず宗次朗が言って。

「これでは私に勝つなんて百年早いですよ。
まあ、百年経っても無理でしょうけど。
じゃあ、今日はこれまで。」

鼻歌を歌いながら道場を出て行く宗次朗の後姿を見つめながら、宗次朗に組み敷かれたとき、胸の鼓動が高鳴った理由を歳三はまだ知らない。








絵日記のNo23の宗次朗を描いたらば、何と!お話をいただきました〜vv
ありがとうございます〜!
多摩時代の、甘酸っぱい二人がたまりません!
これを頂いた時に、管理人はショタ萌えして宗次朗にはまってしまい
一時期、宗次朗×歳ばかり描きまくりました・・・・。(絵日記参照)
そんな逸話を持つ、恐るべきお話でございます。(笑)