「―――ばっ!ばか!てめえ……。
―――俺は、風邪だ!」
土方の顔が風邪のせいではなしに紅い。
「いやだなァ、土方さん、」
にやにやしながら沖田が言って。
「私はなにも、今すぐ。だなんて言ってませんよ。
…期待したんですか?」
土方の唇を指でなぞった。
湯気が立ちそうなほど紅く染まった顔でしばらく沖田を睨みつけていたが、やがて目を伏せ。
音がしそうなほど重たげな睫を動かして、もう一度目をあげて。
「―――や、やっぱり風邪じゃだめか。」
沖田が思わず吹きだしたのに、今度はべつの羞恥で紅く染まった目元で睨んだ。
「だめですよぉ〜。私が島田さんに怒られちゃう。」
「し、島田が。」
とりあえず、言の葉をついだといった風情の土方の頭を抱き寄せた。
「抱きたい。
でも、きっと無理をさせるから。」
「…す、少しくれぇなら………。」
腕の中から、消え入りそうな声で、それでも挑発してくる土方にたまらなくなった。
「―――んもう〜!」
土方の腰を抱き寄せて布団に押し倒す。
とたんに感じたように目をつぶった土方の唇を唇でふさぐ。
「ん………。」
誘うように漏れた吐息にこたえて、唇を舌で割り。
舌を絡めて互いの舌と唾液を味わって。
唇を、離した。
紅く濡れた唇と、潤んだ瞳、上気した頬が沖田を誘っている。
「…土方さんが、私を誘惑しますって島田さんに言いつけますよ。」
土方を見おろす瞳がさきほどとは変わって真剣で、雄の色を交えている。
理性と闘っているその瞳が嬉しくて、土方は沖田の首に手をかけて、己の体の上に引き戻した。
「言いつけろよ。」
「…あとで後悔しますよ。」
「………風邪はうつすと治るって言うぜ?」
沖田が体を離して土方を見ると、悪戯な瞳の色の中に挑戦的な色を浮かべている土方の目があった。
「…フ。………いいでしょう。」
引き受けますよ。
沖田は土方の帯に手をかけた。
|
|