総司に圧し掛かられて、俺は慌てた。


――――――――まじでやる気か!?


「ま、待て・・・!」

「やだ。」


総司が性急に身体をまさぐる。


待てってのに!!


抗議しようとして、唇を塞がれる。

そのまま、噛み付くように口付けられて、舌を絡めてくる。


「ん・・ふ・・・」


乳首を探り当てられ、指で嬲られると、ぞくぞくと快感が背中に走る。


「あ・・・ん・・・!」


身体が勝手に反応する。

自分の意志を裏切って、身体は半ば無理矢理に高められていく。


おめえは俺の旦那だけど、俺にも心の準備ってもんが・・・・。


だけど、嫌ではないと言ってしまった手前、文句は言えない。

しょうがない、と、諦めることにした。






強すぎる快感に、流されていく。

随分、こういうことをしてなかったせいだろうか。

以前よりも敏感になっている。


総司の指が、奥に辿り着く。

そこはもう、受け入れる準備ができていて。


「こんなになって・・・・びしょびしょだよ。」

「ば・・・か・・・・言う・・・な・・・」

「久し振りだからかな・・・。」


わざと音を立てるように、かき回す。

指が、敏感なそこを刺激する。


「あ、あ・・・・んっ・・・あ・・・・」


声が抑えられない。

恥かしくてどうにかなりそうだ。



総司が俺の足を抱え

耳にかじりつきながら、囁いた。


「いい・・・?」

「えっ・・・まだ・・・」


ちょっと早すぎねえか?


「我慢できない・・・。」


覆い被さってきた身体を、押し退けようとした両手を絡めとられて

開かされたそこへ硬いものが突き立てられた。


「―――――あぁ!」


ぐいぐいと侵入するそれに、ついて行けない。

だけど、十分に潤ったそこは、奥まで侵入を許してしまう。


「痛い・・・?」


奥まで押し込んで、総司が聞いた。


「痛く・・・はねえ・・けど・・・・ああっ!!」


もう少し、ゆっくりしてくれ・・・と言おうとして

自分の声に、かき消された。

激しく揺さぶる総司の動きに、俺は悲鳴のような声をあげる。

性急な求めに、気持ちがついていかない。


「あ・・あ・・んん・・・・!!」


久し振りだから、ちょっと・・・きつい。

痛みを伴う快感に、翻弄される。

ぐっと締め付けるたび、その質量が増す。

胎の中が、いっぱいになって苦しい。


「・・・は・・ぁう・・・」


揺さぶられて、何度も奥まで突かれる。

乱暴にされて、それでも感じている自分が悔しい。

せめてもの反撃と、広い背中に爪を立てるのが精一杯だった。













散々貪られたあと。

ようやく開放された時には、俺は起き上がる事ができなくて。

声も枯れてしまっていた。

一体、何度やられたのか、憶えていない。

もうやめてくれと訴えても、総司は許してくれなくて。


「ごめんね・・・。」


しおらしい声が聞こえるけれど、俺は無視した。


めちゃくちゃやりやがって・・・・!


背後から抱き締められて、優しく撫でられているけれど

俺の怒りは収まらない。

目の前の、固い腕に噛み付いてやりたい気分だ。


前から思ってたけど・・・こいつって、交尾の時、乱暴だよな。

他の雄もこうなのか?

思い切り文句を言ってやろうとして、振り向いた。

総司は不安げな顔をしている。


そんな顔しても誤魔化されねえ!



・・・・・・だ、駄目なんだからな!



・・・・・・。


・・・・・・。




はぁっと溜息をついた。


何だかんだ言って、結局・・・・俺もこいつに惚れてんだよなぁ。

肝心なところで、いつも甘い。

頭を抱き寄せ、子供にするみたいに撫でてやる。

まるで子供が3人いるみてえだ。



「次からは、もうちっと加減してくれ・・・。」

「うん、ごめんね・・・・。」

「俺だって、嫌じゃねえんだから・・・。」

「・・・・て・・・。」

「え?」

「歳さんが・・・・俺のいない間、他の誰かと一緒にいるような気がして・・・」

「!」

「気のせいだってわかってるけど・・・。」

「そ・・・んなことあるわけねえだろ。ずっと家にいたのに・・・。」

「うん、考えすぎだよね。」


一瞬、ハチのことがバレたかと思ったが、気付かれてはいないようだ。

しかし、この勘の良さ。

こいつには、何かついてるのか!?

恐るべし、野性の勘・・・・・。




「総司・・・・もし、もしもの話だぞ。」

「?」

「俺に男友達がいて・・・」

「うん?」

「そいつと遊んだりしても・・・」

「誰のこと?」

「だから・・・もし、だって。」

「誰?それ。」

「・・・・う・・・・」


仮定にしちゃ、具体的すぎたか!?


「ちょっと、聞いてみただけだ・・・。」

「・・・・・。」


ああ、もう、失敗だ。

話を有耶無耶にしてしまおうと、他の話題を探すが

なかなか上手いことが言えない。


「会わせて。」

「は?」

「そいつ、会わせて。」


会う・・・って、何する気だ?

総司の声が穏やかなのが、怖い。

にっこり笑ってるけど、目が笑ってないし!


「もしの話だって・・・・もう、いいだろ!」

「・・・・。」


総司は、黙って、にこにこ笑ってる・・・・。

「・・・・仮にそういう奴がいて、会わせたら・・・どうするつもりだ?」

「そうだなぁ・・・・力関係はっきりさせときたいな。」


それって・・・・・結局、喧嘩する気だろ。

やっぱり、こいつ半野良猫だ・・・・。


「歳さんに変な気、起こされたら困るしね。」


やっぱ、無理か・・・・。

溜息をついて、背を向ける。

ハチの事、知ったら怒られるなぁ。


「俺のこと・・・嫌になった?」

「え?」


ぎゅっと力を込める腕。

穏やかな声色が、どこか寂しそうで。


そんな声で言われたら・・・。


つか、誰も浮気するとか言ってねえだろ!


再び、くるりと向き直り。

両手で頬を包む。

随分大人になったけれど、こうして見ると、まだ幼さが残ってる。



「ばか・・・勘違いすんな。」


強引かと思えば、しおらしくなる。


「こんな子持ち、誰も相手にしやしねえよ。」


律儀に首を振るのが、おかしい。




何で、おめえは・・・そんなに俺を好きなんだろうな。

きっとおめえなら、若い雌猫も寄ってくるだろうに。

他所へ行って欲しい訳じゃないけれど。

律儀に俺のとこばかりにいることもないのに・・・・。



自分の容姿ばかりで総司は好いてくれている訳じゃない。

そう考えれば、総司は一体、俺のどこがいいのかと他人事のように思う。

愛想が無くて、我侭で、少しばかり年上な俺よりは

若くて可愛らしい娘が・・・似合いなような気がした。









・・・・・。





あ。


遠くで鳴き声が聞こえる。



「総司、餓鬼が起きた!」


総司もはっと気付き、慌てて身繕いする。


「俺は先に出てますから、歳さんはゆっくりしてて!」


そう言い残して、総司は飛び出して行った。

額に、そっと口付けていくのを忘れずに。



そろそろ起きる時間だったのを、すっかり忘れていた。

だけど、総司が行ったなら大丈夫だろう。

ほどなくして、総司の子供をあやす声がして

子供の鳴き声が止んだ。


ほっとして、毛布に突っ伏す。

まだ、身体にだるさが残る。


時々、酷い目にあったりもするけれど

俺には・・・・いい旦那だと思う。


普通、雄は育児をしないものだ。

なのに、子供の面倒を喜んで見て・・・・しかも、あいつは俺よりマメだ。

すごく助かっている。

普段は優しいし、よく気がつくし、俺を優先してくれる。


ただ、あのヤキモチだけはいただけない・・・。

それさえなければ、と思うのは贅沢だろうか。

だけど、それは俺を好いているから・・とわかってるから

結局許してしまうけれど。




最近の俺は、総司を好いてはいるが、何となく素直になれない。

そのくせ、心の中では・・・俺だけが、どんどん好きになっていくようで。

何だか、怖い。


「そうじ・・・・。」


薄い暗闇の中で、聞こえる俺の声は、情けないほど頼りなくて

少し、悲しくなった。